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序
詩云(しにいわく)倬(たく)たる彼(かの)雲漢章(うんかんしやう)を天に為(なす)と
是(これ)秋の物日の始(はじめ)にて 昔郭幹(くわくくわん)といへる
者は卄(わかう?)して清標(せいひやう)あり 或時(あるとき)乗月庭中(月にせうしてていちう)に
臥(ふ)すに 空中を視(み)れは美人在(あつ)て再々(せん/\)
として下れり 則(すなはち)云(いわく)吾(われ)は天の織女(しよくぢよ)也
天帝賜命(てんていのめいをたまはつて)人間に遊ばしむ 願(ねがはく)は神(しん)
契(けい)を乞(こはん) 乃(すなはち)升堂(とうにのぼり)共枕(まくらをともにす)を 見ぬ唐土(もろこし)の
雑?(議?)より 名もなつかしき墨河(ぼくが)の流(ながれ)
は銀灣(あまのかわせ)の一葉(いちにう)に押(お)せやれ 男(おのこ)の声
高く日本堤の後朝(きぬ/\゛)東宙(ちう)を走らす
掛声は二星(にせい)を渡す烏鵲(うじやく)の橋 亦(また)
天上の歓楽(くわんらく)は七宝(しつほう)の枕に臥して長寿
3(左頁)
の冨(とみ)を得(え) 実(げに)や一夜の春情(そのなさけ)は千歳(せんざい)の
思ひ出に媚(いろ)を競(あらそ)ふ洞房(くるわ)の繁栄 善尽し
美尽して 簷(のき)を並べし蕃笆(まがき)の内に咲(さき)帰(かへり)たる
金艸(あさくさ)の種(いろ/\)多き其(その)名譜(なよせ)を 盛(さかり)久しき妹背(いもせ)の
道の假名(かな)に和(やわ)らぐ例(ためし)によつて 直(すぐ)に
這婥観玉盤(このふみづき)とは題する爾已(のみ)
安永二癸巳 仲秋
金花縣遊民
千秋観 文祇識