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一目千本 華すまひ序

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読んだ本 

『一目千本』(大阪大学附属図書館所蔵)

出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100080738

 

4

華すまひ序

月は隈(くま)なきをのみ詠(なか)め

花は盛(さかり)をこそ珍重(もてはや)す

これ皆世の人の常なる

へし 美人もまたふた

りには過(すき)す 只(たゝ)たのしみは

其(その)一色(ひといろ)になんよるべけれ

盧生(ろせい)が 四季折々は

目の前と極(きはめ)し栄花(えいくは)も

 

 

5

暁(あかつき)といふ限(かきり)あり 爰(こゝ)に

名にしおふ青楼(せいろう)の栄(えい)

花(くは)は さ(斜)くらに春の長

きをしらす 郭公(ほとゝきす)に薄(うす)

着(き)をしらす 秋たつ風

に暮(くれ)の淋(さひ)しみをしらす

雪の降(ふる)日も寒さを

知らす かゝる限りなきたの

しみこそ まことの栄(えい)

 

花(くは)とはいふなるへし この

頃 一人の大尽(たいしん)来(きた)り 戯(たはむれ)に

此(この)里(さと)の遊君(ゆうくん)の角力(すまひ)を

見まほしきよし(由)を求(もと)む

里雀(りしゃく)てふもの(という者)承(うけたまは)り 四(し)

季(き)の花を名君の姿(すかた)に

よそへ 春夏を東と

さため(定め) 秋冬を西と極(きは)

めて 既にすまひを初

 

 

6

めける

抑(そも/\)相撲(すまひ)の取組(とりくみ)は 紅白(かうはく)

むらさき 薄浅葱(うすあさき) こゝろ(呂)

/\に色香(いろか)を闘(たゝか)ふ 紫(むらさき)は

あけ(朱・明)を奪ひ 夜の黄色は

白きを欺(あさむ)く 三十二相(さう)

八十種好(しゆかう)互(たかひ)に争ふ(あらさふ)百(もゝ)

の媚(こひ)

行司(きやうし)次第(したい)に団扇(うちは)を

 

あけ(上げ) 西か(が)勝(かち) いや/\ 東か

勝と 御贔屓(こひいき)の手すりも

動(うこ)く御言葉(ことは)は 一から十

まて取組か わるい/\の御

評義(ひやうき)に 作者は燈臺(たうたい)元(もと)

くらし 御見物(けんふつ)のお目

かねかうこかぬ(お眼鏡が動かぬ?)所 今日(こんにち)は

初日(しよにち)

 

 

7(挿絵)

 

 

8

とうざい/\今日は先以(まづもつて)

すまひの初日とこさり

まして 何茂様(いつれもさま)早朝(さうてう)より

御出くたされまするたん(段) 作

者本屋は申(もうす)に及す(およばず) 惣(そう)

座中(ざちう) いか斗(はかり)大慶至極(たいけいしこく)に

奉存(たてまつりぞんじ)ます 扨(さて)遊君四季

の花角力(はなすまひ)とり組か肝心(かんしん)

かなめ 勝負(かちまけ)は御贔屓の

 

御言葉にこさりますれば

とくと御神妙に御一覧

くだされませふ 急のおもひ

付ゆへ おほしめし(思召)違ひ

ました所は 前後柳(ぜんごやなぎ)と御

一覧のほど こひねがひ奉り

ます 此上(このうへ)思召(おほしめし)もござります

ならば 御しらせ下されませふ

二のかはりに評判勝負付(つけ)

 

 

9

御目にかけまする 御存(こそんし)の

ことゝ名君達も大せい(大勢)

に御さりますれば 此うちに

もれました方(かた)は あとの

趣向に御目にかけまする

扨 わけて御断(おことはり)を申上(もうしあげ)

まするは 行司(きやうし)双方(さうほう)もらひ

まするせつ(節)は 御見物様

方 御いひ分(言い分)なく 行司へ

 

御預(あつ)けくたされませふ 此

たん(段)前(まへ)に申上置(をき)ます

 

 くらへ見よ 西と

   東の花の(濃)雲

 

      紅塵陌人(こうじんはくじん)述

 

 

 


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