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吉原細見序文 安政二年(1855)

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読んだ本 https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/wo06/wo06_01531_0007/index.html

(PDF)

2

佳辰令月(かしんれいげつ)歓無極(よろこひきはまりなし)萬歳(ばんぜい)千秋楽(せんしうのたのしみ)未異(いまだことならず)。人心(ひとこゝろ)のどけき春は五葉(いつは)の松さらに

若緑の色をあらはし。一しほもてた衣々(きぬ/\゛)には見帰柳(みかへりやなぎ)も後髪(うしろかみ)をひかるゝに似たり。

堤(どて)の朝風寒くともいやな方(かた)へも靡(なびく)が勤(つとめ)。四方山の笑ふてつらき坐敷(ざしき)もあれば。

百千鳥(もゝちどり)ないて嬉しき閨(ねや)もあり身はいたづらに売(うら)れ来て。他(ひと)にかはるゝ鶯の

ほう法華経のほの字さへ。惚(ほれ)ては愚痴になるものを。野暮とは廓(さと)の訳しら

ず。不知(しらず)しられぬ中の町(ちやう)行(ゆき)かふ袖の移り香をとめてくゆらす一炷(ひとたき)は。

風流(みやび)ことなる花月(くわげつ)の圓居(まとい)帛紗捌(ふくささばき)のゆかしさに。薫りえならぬ窓の

梅みのなるはては粋(すい)とよぶ。行末(ゆくすえ)契る睦言も月には憎や雲となり花には

もよひ雨となる。雪の膚(はたへ)の清き樓(たかどの)。色に媚(こび)酒にあく月日も遅き不老の

大門(おほもん)此(この)仙境に至らんものは。實(げ)に長生(ちやうせい)の限りあらまし

  卯の春    寿界山人 しるす

 

 

 

 


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