読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/pid/9892706/1/3
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まじめなる
口上
まつもつてわたくし見せの議おの/\様御ひいきあつく
日ましはんしやう仕ありがたき仕合ぞんし奉り候
扨作者京伝申候はたゞ今まてかりそめに
つたなき戯(げ)さく仕り御らんに入候へとも
かやうのむえきの事に日月および
箋議をついやし候事さりとは
たはけのいたる殊に去来なぞは世の中に
あしきひやうぎをうけ候殊ふかく
これらをはぢ候て当年よりけつして
戯作相やめ可申とわたくし方へもかたく
ことはり申候へ共さやうにては御ひいきあつき
わたくし見世きうにすいひに相成候事ゆへぜひ/\
当年はかりは作いたしくれ候やう相たのみ候へは
京伝も久しきちいんのわたくしゆへにもたしかたく
そんしまげて作いたしくれ候すなはちしやれ本およびえざうし
しんはん出来候間御好人さまはけたいもくろく御らん
の上御求可被下ひとへに奉希候以上
寛政三ツ亥の春日 版元 蔦唐丸
真面目成る口上
先ず以て私店の議、各々様御贔屓厚く
日増し繁昌仕り、有難き幸せ存じ奉り候。
扨、作者京伝申し候は、只今まで仮初めに
拙き戯作仕り、御覧に入れ候えども、
斯様の無益の事に、日月及び
詮議を費やし候事、さりとは
戯けの至り、殊に去来なぞは世の中に
悪しき評議を受け候事、深く
これらを恥じ候て、当年より決して
戯作相やめ申すべし、と私方へも堅く
断り申し候えども、左様にては御贔屓厚き
私店、急に衰微に相成り候事ゆえ、是非是非
当年ばかりは作致しくれ候様(よう)、相頼み候えば、
京伝も久しき知音の私ゆえに、黙し難く
存じ、曲げて作致しくれ候。すなわち洒落本及び絵草紙
新版出来候間、御好人様は、外題目録御覧
の上、御求め下さるべく偏に希(こいねが)い奉り候。以上。
寛政三ツ(年?)亥の春日 版元 蔦唐丸